●質問
わたしは子どもの頃から人見知りが激しく、この歳になっても直りません。どうすれば人見知りが激しい性格を直すことができますか?(37歳)
●回答
人見知りが激しい人として生きていく覚悟を持てば、自然と人見知りする性格は消えていきます。
人見知りの激しい性格に限らず、エッチが大好きな性格も、せっかちな性格も、すべて持って生まれたものです。小さい頃の親の影響だって、持って生まれたもののうちに入ります。自分で選べないものはすべて、持って生まれたものです。自分で選べないから。
この「選べなさ」を「変えたい」と思っても、変わるはずがないんですよ。簡単な例を挙げると、もっとお金持ちの家に生まれたかったなあとか、もっと優しい親の元に生まれたかったなあと思っても、そんなの無理でしょ? だから、持って生まれたものを変えようと思っても無理なんです。
持って生まれたものの選べなさを、そっくりそのまま認めることができた瞬間、真に生きている実感を得た――こんなことを言っている哲学者がいます(キルケゴール)。
彼の性格は「憂愁」です。憂愁、つまり、いつも何かを不安がり、臆病で、子どもの頃からみんなと一緒になって今この瞬間を楽しめなかった。そういう性格を、彼は何度も変えようと試みます。でも変わりません。
35歳のある日、彼はふと「俺は憂愁を背負ったまま生きていくしかない。というか、俺は憂愁でいいんだ。いつも何かを不安に思い、今この瞬間に集中して生きられない自分、それこそが俺なんだ」と悟るんですね。平たくいえば、開き直った。
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キルケゴールが、自分のイヤな性格を、いわば開き直って認め受け入れることができたのはなぜか? 具体的にどのようなきっかけがあったから、彼はそうできたのか?
これについて、彼は何も書いていません。だから後世の人たちは、その「きっかけ」を推測するしかありません。
推測するに、彼は父親の死を経験し、婚約者と婚約破棄し、街中の人に嘲笑され、というような様々な経験を経て、35歳の初夏のある日、「悟った」のだろうと思います。
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人見知りが激しい性格を直すには、だから、いろんな経験をすることです。いろんなことを経験する中で、私は私として生きていくほかはない、と思えた時、つまり、人見知りとして生きていく覚悟が芽生えたとき、あなたは、他に替えのきかないかけがえのない人となります。少なくとも、偉大な哲学者キルケゴールは、そう私たちに伝えています。