●質問
就きたい職業に就けなければ死んでもいいと思っています。こんな私はどこかおかしいですか?
●回答
おかしくはありません。が、レアな人だ、とは言えます。
キルケゴール心理学によると、就きたい職業に就けなければ死んでもいいと思う人は少数だそうです。多くの人はそもそも「絶対にこの仕事に就きたい」というものを持っていません。「まあまあやりがいがあって、そこそこ安定したお給料がもらえて、そこそこ福利厚生がしっかりしている会社であればどこでもいい」と考えます。これが世の中でもっとも多い人です。
次に多いのが、夢を抱くものの、それが実現しなくてもまあいいか、とあきらめることのできる人です。たとえば、ピアニストになりたいという夢をもっていたものの、大学4年にもなると自分の能力の限界が見えて、同時にピアニストという運に左右される「浮き草稼業」ではない安定した職のほうが魅力的に感じ「まあいいか」とあきらめる、といった人。
そして、もっとも少ないのが、絶対にこの仕事に就きたい、この仕事に就けなければ死んでもいいと思う人。芸術志向の人に多いですね。作家になれなければ死んでもいいと思う人っていますよね。ピアニスト、画家、写真家、哲学者・・・・。
そういう人は「その夢を抱くこの自分」に絶望しているのですが、じつは「永遠」に怒っている人です。
永遠とは、その夢をあなたに抱かせた何者かのことです。あなたはどうしても絶対に作家になりたいと思っていますが、なぜそこまで強い願望を抱いたのか、じつはあなた自身がよくわかっていません。強烈に感動した圧倒的な小説を読んだから「自分も作家に」と思ったというのは「直接的な理由」です。では、その直接的な理由の背景は? なぜ「そういう思い」を抱いたの? などとトコトン考えると、自分がそこまで強烈な思いを抱くようになった理由を「なぜか」としか言えなくなりますよね。
「なぜか」そういう強烈な思いを抱くようになった、というのは、「永遠=何者か」があなたの心にそういう思いを植えつけたということだと、キルケゴール心理学は言います。ようするに、今の言葉(?)で言えば、無意識の領域におけるなんらかの作用によって、あなたは「就きたい職業に就けなければ死んでもいい」と思っています。
それをキルケゴール心理学は永遠と呼ぶのですが、その永遠と引き続き向き合い、対話することによってのみ、あなたは「救われる」。キルケゴール心理学はこのように言います。
参考になれば幸いです。