●質問
わたしは彼氏とケンカをしてはいけないと思いつつも、いつも喧嘩になります。どうしてわたしは彼氏と喧嘩してしまうのでしょうか
●回答
ケンカ、すなわち相手に対して怒るというのは、じつは自分自身に対して怒っているということを意味します。
具体的には、「なりたい自分」になることの出来ない「この自分」に怒っているということです。
例えば、彼氏がなにかをしてくれなかったことに怒るというのは、彼氏がなにかをしてくれている理想的な自分に届かない、その「届かなさ」が怒りの感情となって表に出てきているということです。
これはすべての怒りの感情に関して言えます。つまり、アンガーマネジメントの基本です。
一般に、アンガーマネジメントと言えば、怒りの感情が湧いてきたら5秒だか6秒だか我慢してその感情をやり過ごしましょう、などという表層的なハウツーが必ず出てきます。
しかし、それは単なる対処療法であって、なぜわたしは彼氏とケンカしてしまうのか、という問いに答えていませんよね。
あなたは「なりたい自分」と「この自分」、すなわち「こうあるしかない残念な自分」との間で葛藤し、その葛藤が言語化できないから怒りの感情という曖昧なものを外に放出してしまうのです。
ということは、彼氏とケンカするのをやめようと思えば、なりたい自分とこの自分の折り合いをうまくつけることができればいいわけです。人間には、なりたい自分を諦めるのでもなく、見下すのでもなく、ちょうどいい具合に「なりたい自分になれないけど、この自分でまあいいか」と思える境地というのがあります。
このへんからは科学の心理学は一切手を出せない分野なので、心理哲学の中で考えるしかないことですが、その境地はおそらく、自分のルーツ、すなわち、おじいちゃん、おばあちゃん、お父さん、お母さんと、自分が、どことなく似ていることがうれしいと思えたときに、そういった気持ちになれるように思います。
というわけで、あなたが彼氏とケンカしてしまうのは、理想の自分と現実の自分との折り合いがついていないからです。
※参考 『自分を愛する方法』玄文社(2020)拙著